「あれ?

手鞠、めずらしいね。

今日は先輩のとこ行かないの?」


登校して間もなく、嬉しそうにあいちゃんが声をかけてくる。


あいちゃんは、あたしが先輩のとこに行くのをよく思っていないみたいだ。


「うん。

今日は放課後に行くの。

それまでは行かないよ」


「え?

やっぱり行くんだ」


あいちゃんは、あたしの返事を聞いた瞬間、眉をハの字にして悲しそうにした。


ごめんね、あいちゃん。

この想いだけは止められないんだ。


もう、あたしの、この地球で生きていける時間は残り少ないから。




今日は先輩に、昨日作ったチョコを渡しに行くの。

でも、朝から渡すなんて、なんとなくいやだ。

楽しみは最後まで取っておかなくっちゃ!!


放課後、先輩のとこに行って、それでチョコを渡すんだ。


それまでは先輩のとこには行かない。

行ったら多分、あたしのことだから顔にすぐ出てしまう。

だから、少しだけガマンだ。



あたしはそっと、カバンの中に入っているピンク色の包装紙に包んだチョコがあるのを手で確認した。