「そう。
ご褒美。
ここまで手鞠ちゃんを運んだご褒美。
とは言っても、大人しくぼくに抱かれている手鞠ちゃんは可愛かったんだけどね」
……………さすが先輩。
さらりとキザなことをおっしゃりになる。
先輩の言葉を聞いたあたしはたぶん、ものすっごく顔が赤くなっていると思う。
だってね、顔、熱いもん。
とっても……とっても…………。
ご褒美……あたしが先輩に渡せるものって、なんだろう。
手作りクッキーとか?
ケーキとかかな?
自慢じゃないけど、あたし料理すっごく苦手なんだよね。
お母さんは得意なんだけど……なんであたしってばこんなに不器用なんだろうっていうくらい、料理下手くそなんだ。
前にお味噌汁つくったときも、おかしな味になったの。
お味噌汁って、お味噌入れるだけでいいじゃん?
なのに、だよ?
それにそれに、お裁縫も苦手。
雑巾をつくろうと思って縫っていたら、気がついたらおかしな物体が出来上がっていたことがあった。
あたしってば、有り得ないくらい、ぶきっちょなんだ。
…………どうしよう。
何を渡せばいいんだろう。
女の子らしいこと、何にもできない……。
このままじゃ、先輩に付き合うの撤回されちゃう……。



