∮ファースト・ラブ∮


「手鞠ちゃんってひどいなぁ~。

ぼくが抱きしめてここまで来るまで、ずっと上の空だったでしょう?

何を考えていたのかな?

ぼくのことじゃないでしょう?」


そんなことない!!

いっつも考えるのは先輩のことだもん!!


「違います!!

あたし、先輩、カッコいいなって、そう思っていただけです!!」


言った!!

言い切ったよあたし!!


「へぇ~。

そっか~。

ぼくは、そんなに格好いい?」


「はい!!

そんなの当たり前じゃないですか!!」


あたしは胸張って答えた。


ちがう。

カッコいいだけじゃない。


先輩はとっても優しいんだ。



だって先輩、あたしを助けてくれた時、

人魚が海にいるってみんなに言いふらさなかった。


そのおかげで、あたしは今日まで剥製(はくせい)にならずにすんでいるんだ。



「ふふ。

ありがとう。

でもね、ひどいよね。

ぼくが一生懸命キミを運んでいる時にそんなことを考えていたなんて」



…………う。

ごもっともです。

すいません。


「ごめ……」

「あ、謝らなくていいから、

ご褒美、欲しいな」





はい?

ご褒美?



先輩の顔をマジマジと見つめれば、

にっこり微笑み返されてしまう。




ぐっは~。

やっぱし、先輩カッコいいデス。