「着きましたよ、お姫様」
先輩の鼻にかかった声で我に返った。
気がつけば、クリーム色をした我が家が目の前にあった。
…………あたし……。
ずっと先輩にしがみついていたんだ……。
道行く人たちにあたしがお姫様だっこされてる姿を見られたんだろうな。
うわっ!!
恥ずかしい!!
あたし先輩に出会った当初のことをずっと思い出していたんだ……。
「あ、あの!!
ごめんなさい!!」
そう言って、名残惜しく思いながらも先輩の首から両手を離す。
体を捩(よじ)って先輩の力強い手から抜け出そうとすれば、
先輩は首を振った。
――――へ?
あたしの口は今、逆三角形になってること間違いなしだろう。
さぞや間抜け顔なことだと思う。



