あたしはひたすらコクコクうなずくだけ。
もう声なんて出せない。
「よかった。
ここは漁もするらしいから、
これからは気をつけたほうがいいよ」
「久遠~!!
久遠~!!」
遠くから誰かの名前を呼ぶ女の人の声がした。
先輩は女の人に視線を映すと、またあたしを見た。
そこで、男の人が久遠っていう名前だって知ったんだ。
「じゃあね、かわいい人魚姫」
トン。
先輩は、あたしの口を人差し指で触れるとすぐにあたしから離れていった。
向かった先は、名前を呼んでいた女の人のとこ。
あたしは岩場に隠れて先輩と女の人のやり取りを見つめる。



