ぼくも微笑み返せば、すぐに顔を逸らしてテーブルの真ん中にある大きな皿に乗っているサラダを小皿によそいはじめる。


「はい。

麻生先輩」

ぼくへとサラダを乗せた小皿を渡してくれる手鞠ちゃん。


その時、ふと彼女の鎖骨が見えた。

私服から覗く鎖骨には、さっきぼくがつけたキスマークがあった。


彼女はぼくのものだという証を――――――。



おそらく、彼女はぼくがつけたキスマークをまだ見ていないだろう。


見ていれば、きっと今頃はパニックになっていること間違いなしだと思う。



だが、いくらなんでも早く気づいて欲しいと思う自分もいる。

だからつい、意地悪をしてしまう。


「ありがとう」

ぼくは礼を言って、手鞠ちゃんが差し出してくれた小皿と一緒に彼女の両手をしっかり握った。


すると……………。

ボンッという音が手鞠ちゃんから聞こえてきそうなほど、彼女の顔は見る見る真っ赤になっていく。




わかりやすい。




深いキスだってしたのにね。

手を握ることでさえも恥ずかしそうにするなんて……。


ウブな彼女に思わず笑顔がこぼれれば、コホンと前から咳をする綺羅さんの声が聞こえた。