∮ファースト・ラブ∮


気がつけば、あたしは砂の地面に寝転んでいた。


……目の前には麻生先輩の綺麗な顔。



「ひどいな~手鞠ちゃんは~。

ぼくのこと、忘れてたでしょう?」


ドッキン。

見事に言い当てられて、あたしの心臓が大きく鼓動した。



ほんと……ひどいと思う。


だって、好きな人が間近にいるのを忘れてお父さんを怒鳴るとか……ありえない。





「それに、ぼくから視線を逸らすことも許せないな」

ドキン。

また、麻生先輩のひとことで、あたしの心臓は大きく鼓動した。




嫌われるのかな…………。




そう思っただけで、必死でひっこめた涙がまた…………出てきそうになる。




――――せっかく…………せっかく泡にならずにすんだのに……。


人間になれたのに……麻生先輩と両想いになれたのに……。



それを……バカな行動で全部がなくなってしまうんだ。


謝らなきゃ。

早く謝って、麻生先輩に許してもらわなきゃ。




だって…………麻生先輩と離れるって思っただけで、あたしの心臓……とっても痛い。


苦しくなる。



息…………できなくなる。