きゅっ。
麻生先輩の指と絡んでいる、携帯を持っていない手も強く握りしめられた瞬間……。
「……………っつ」
お腹の辺りが……少し……ムズってした。
へんな声が出そうになったのは、なんでかな……。
わからない。
でも、胸がね、『きゅん』ってしたの……。
だから、きっと……麻生先輩のせいだってことはわかるよ。
でもでも、へんな声は出せない。
なんたって、今はお父さんと会話中なんだから。
あたしはムズムズした感覚をなんとか無視して口をあける。
「もしもし、お父さん?」
…………ツツゥ……。
麻生先輩の人差し指が、あたしの人差し指の腹に円を描くようにしてなぞられた。
そわわっ。
麻生先輩と絡み合っている指の先から背中へと一気にムズムズした感覚が流れ込んでくる。
おかげで、せっかく元気いっぱいでお父さんに話しかけたのに、口はまた閉じなきゃいけない。
もう!!
麻生先輩!!
お父さんと話できないじゃん!!
あたしは麻生先輩に向かって眉を寄せて怒ってる顔をつくった。
そしたら……麻生先輩はにっこり微笑んでくる始末。
なんだろう。
あたし……オモチャにされてる?
そんなことをお父さんとの会話中にしていると――――――。
「…………おかしなイタズラはやめてくれないか?」
電話越しからお父さんに…………怒られた。



