∮*** Side: .+*麻生 久遠*+. .+*Kuon asou*+. ぼくは確かに、手鞠(てまり)ちゃんに口づけをしたと思った。 手鞠ちゃんのやわらかい唇に、微かだが、触れたと……思った。 だが……………彼女は――――――。 『ありがとう』 満面の笑みを浮かべ…………。 ぼくの両腕をすり抜けた。 今、ぼくの腕には、彼女を包んでいるであろう体も、何もない。 ――――間に合わなかったんだ。