「実は、人魚一族には、ふたつの条件で人間になることが可能なんだ。
わたしの妻、百合はすでに人間になっている」
「!!
それでは!?」
手鞠ちゃんも、百合さんのように、人間になることができる?
ぼくは、思いもよらない言葉を聞いて嬉しくなった。
「だが、条件が達成できないと泡になって消える。
人魚姫の童話のように……」
浮上した気持ちは、綺羅さんによって、すぐに落とされた。
…………それは……どういう?
目を瞬(しばた)かせ、綺羅さんと百合さんを交互に見つめると、
百合さんは、ぼくから目を逸(そ)らし、
綺羅さんとは真剣な眼差しとぶつかり合った。
「人魚から人間になる条件。
ひとつめは、
恋をした相手に告白すれば、24時間以内に両想いになること」
「それって!?」
「ええ……あなたは、それをクリアさせてくれた」
百合さんはにこりと微笑み、ゆっくりと頷(うなず)いた。
だが、そのやわらかな笑顔もすぐに消えた。



