手鞠ちゃんの家からぼくの家までわずか15分。

そこまで距離はないと思っていた。



なだらかな一本の坂道をそのまま進めば、彼女の家がある。



だが、今のぼくには、その15分という距離がとても長く、

ぼくの家から手鞠ちゃんの家まで連なる並木道が永遠に続くように感じた。




ぼくの息がすぐに切れてしまうのは走っているせいじゃない。

焦っているからだ。


手鞠ちゃんからの手紙は握りしめすぎて皺になっている。


次、手紙を開いたとしても、ペンのインクはぼくの汗によって滲み、

手紙の内容を見ることはできないだろう。




それくらい、ぼくは手鞠ちゃんの何かに焦っていた。





やっとのことで、手鞠ちゃんの家の青い屋根が視界に入った。




――いくつも一軒家が建ち並ぶその場所。


そこに、青い屋根をした二階建ての一軒家がある。


玄関の扉の前で立ち止まれば、足が棒のようになっていることに気がつく。




大きく息を吸って乱れた呼吸をととのえると、

焦る気持ちを押し殺し、彼女の家の戸を叩いた。




ぼくの額から頬をすり抜け、一筋の汗が地面に落ちる。







手鞠ちゃん。


頼む。

家にいてくれ。








願うのはそればかりだった。