「何が?

じゃないだろ?


手鞠ちゃんだよ。


いいのか?」



やはり、睦は彼女のことを言っていたようだ。



「いいも何も。

彼女はここには来なくなった。

きっとぼくに愛想をつかしたんだろう」


言えば、自分の心臓が痛むのがわかった。



いつからぼくは、こんなセンチメンタルになったんだろうと思う。


以前は……手鞠ちゃんと出逢う前は、こんなふうでもなかったのに……。



気がつけば、薄ら笑いを浮かべていたらしい。

いつの間にか、睦はグラウンドから視線を外し、眉根を寄せてぼくを見ていた。







手鞠ちゃんに愛想を尽かされたんだから…………これでいい。




――――このままでいい。








手鞠ちゃんを諦めきれない自分に、ずっと言い聞かせていた。


だが、その思いも翌朝には一変する。