でも……あたしはそれは違うと思った。
だって、ほんとのほんとに好きだったら、笑ってほしいって思うから……。
尚吾さんは……きっと知っている。
自分の隣で、好きな人……香織さんが笑っていないことを……。
だからだよね……香織さんが側にいるのに、麻生先輩をいつも睨んで不幸にさせようって思ってるのは……。
自分じゃ、幸せにできないって、尚吾さんは知っているから……心が満たされないから……麻生先輩を傷つけようとするんだよね。
「でも、それは好きっていうものじゃないよ」
あたしの声は、それはそれは大きな言葉になって出てきた。
周囲にいるみんなが、あたしに注目する。
尚吾さんも、麻生先輩から視線をはずし、あたしを見つめた。
「違うんだよ。
愛ってね……全部を包むものなんだよ?
縛って、縛って、身動きできないように、がんじがらめにしてしまうことじゃない。
それは……愛じゃない」
ねぇ、気づいてほしい。
思い出してほしい。
「初めて香織さんを好きになった時、尚吾さんは、たしかに香織さんを大切にしようと思ったでしょ?
その時、あなた自身は、自分のことを誇りに思ったよね?
それが…………愛だよ。
相手を想うことと同時に、自分も大切に想える……」
――――それが……愛なんだ。



