香織さんの首を締め付けている大きなゴツゴツした手は、息の根を止めようと少し離れた距離にいるあたしたちのところにさえも、軋む音が聞こえてくる。
香織さんの苦痛の表情は次第に青ざめていく……。
……やめて……やめて…………。
ちがう。
コケにするつもりなんてないよ。
「やめ……」
「香織!!」
ガコッ!!
あたしが香織さんを苦しめている尚吾さんの手にしがみつこうとした時だった。
影は急に後ろから現れ、気がつけば尚吾さんは目の前で芝生の上に倒れていた。
「香織……大丈夫か?」
尚吾さんから解放された香織さんは首を押さえ、呼吸ができたことで空気が一気に肺に到達したようだ。
苦しそうに咳をしていた。
そんな香織さんを支えていたのは……。
「…………久遠……ってめぇ……」
尚吾さんは、香織さんの背中を心配そうに擦っている人物を睨んでいた。
麻生(あそう)先輩…………。
尚吾さんを叩いたのは他でもない、麻生先輩だった。
「よかった~。
間に合った!!」
さらに後ろから、あたしが知った声が聞こえてきた。
「おっそい!!
何やってたのよ、馬鹿葛野(くずの)!!」
紀美子先輩は、やって来た新しい人物に叱咤(しった)していた。
そこで、あたしは気がついた。
さっき、紀美子先輩がメールしていた相手が誰だったのかっていうことを……。



