先輩を見つめながら、囲んでいる女子を避けて正門前を通りすぎようとした。
その時だった。
「手鞠……ぼくをおいていくなんてひどいんじゃないかな?」
声ははっきりと聞こえた。
あたしの足は先輩の引力には勝てない。
すぐさま止まった。
振り向こうとすれば、腕を掴まれてしまった。
「みんな、ごめんね。
待ち人が来たから、ぼくはこれで失礼するよ」
先輩の言葉で女子は黄色い声とともに悲鳴も聞こえた。
「あ、あの、せんぱ……」
先輩を見上げれば…………。
チュッ。
「!!」
『いやああああああ!
久遠く~ん』
あたしの口に柔らかいものが乗っかったと思った瞬間、
これまた恐ろしい悲鳴が聞こえた。
「せっ、せせせせせせせ!!」
あたしはもう、パニックだ。
だって、だってだって、キスされたんだよ?
しかも、周りには人がたくさんいるのに!!



