睦は、今にも噛み付いてきそうな剣幕でぼくと下敷きになっている彼女を見据えていた。


「……っ!!

じゃ、久遠……続きはまた後で!!」


眉間に皺(しわ)を寄せ、凄まじい怒気を含んだ眼差しを向けられた彼女は姿勢をピンと張って、上に乗っているぼくを押す。


彼女から体をずらせば、彼女はベッドの上に散らばっている服を素早く羽織って、そそくさと逃げた。


バタバタと忙しない足音が遠のいていく。


「睦……お前に覗きの趣味があったなんて知らなかったよ」



怒りをあらわにしている睦に向かって、ぼくはわざと明るく振舞う。



睦がここへ来た理由が……なんとなくわかったから。


それ以上何も言うなという意思を、その言葉に含めた。



「なあ、お前……何してんだよ?」


だが、睦はそんなことも関係ないと言わんばかりに口をひらいた。


ぼくは仕方なくベッドから体を起こし、はだけていたカッターシャツのボタンをはめていく。

「何って?

いつものことでしょ?」



今更何を?



この行為は今に始まったことではない。


香織を好きだと認識し、彼女から離れた直後からのものだ。



何をしているなんて、そんなことは、もう言われることでもないだろう?




ベッドから腰を上げたぼくは睦と向き合った。