「必要なのは、あたしじゃなくって……香織さん……あなただった。
麻生先輩は……香織さんを忘れようとして他の女の人と付き合って……でも、結局尚吾さんに邪魔されて……深い傷をつくって……」
それでも、香織さんを忘れられないんだ。
「知らず知らずのうちに、目で追うくらい……麻生先輩は、香織さんのことを好きなんです」
麻生先輩が側にいてほしい相手……それは、お転婆で子供なあたしじゃなかった。
香織さんだった。
話していくと、涙があふれはじめる。
綺麗な緑が揺らめく。
でも、だめ。
まだ泣いちゃいけない。
あたしは必死に涙を止める。
「……わたし…………わたしは…………」
あたしの想いが香織さんに届いたみたいだった。
うつむいていた顔があたしの方を向いた。
香織さんの中の答えが出る。
「『わたしは……?』
何?
俺もその言葉の続きが聞きたいな」
『!!』
…………低い声が後ろから聞こえた。
声の方を振り向けば…………。
そこには…………尚吾さんが立っていた。