麻生先輩を想ってるって答えてほしい。



お願いだから……。


自分のために、麻生先輩のために、どうか……どうか正直になって……。





その想いを胸にしまって、ぎゅっと唇を結ぶ。





「わたしは………。

尚吾がこわいのよ……少し男の人と話せば、顔色を変えてわたしを抱きしめてくるの……」


香織さんは、両手でギュッと自分の体を包んだ。


たぶん、その時のことを思い出しているんだろう。


顔が真っ青になっていた。




「わたしは、あなたのように、強くはないのよ。

だから……」

目を伏せる香織さん。

そんな中、今まで黙っていた紀美子さんが口をひらいた。


「ねぇ、なんか勘違いしてない?

強い人間なんて、この世にはいないんだよ?


手鞠ちゃんだって、こう見えて、とても傷ついてる。


だけどね、進まなきゃいけないんだよ?



苦しんで悲しんで……でもね、

あたしたちは、そうやって、前に進んでいくんだ」



紀美子先輩…………。