∮ファースト・ラブ∮


「あと……10日しか……な……いの…………ごめ……ひっく。

ごめなさ…………あたし……ダ……メなのに…………。

泣いちゃ……だ……め……な……のにっ……。

悲しませちゃ……いけな……っく……ぅぅ……ふえぇ……」



涙はひと言話すたび、大きな粒になってあたしの手にあたる。



「手鞠……」

そしたら、お母さんの声が後ろから聞こえてきた。




ふわり。




あたしは、やわらかなお母さんの匂いに包まれる。


そして……あたたかい体温を感じる。



お母さんが、あたしを抱きしめてくれたの。



「お……かあさん…………ふっ……ふえぇ……」



「苦しいね。

悲しいね。


受け入れてくれないのは……とても痛いよね……」



お母さんの苦しそうな言葉が振動で伝わってくる。


「でもね……手鞠。

この先は、あなたがどうしたいか、決めなさい」



どうしたいか?


決める?



「あなたが、泡になるその日まで、どうしたいか。

決めなさい。


このままでいるか……それとも、逃げないで好きな人にぶつかるか……決めなさい」




……あと…………1週間の、この命。


このままか、それとも…………。



どうすればいい?


どう動けばいい?




わからない。


わからないけど…………。