洗面所に備え付けられている鏡を見れば、
眉はハの字になって、口角は下がっている。
あたしの顔は泣きそうだった。
ああ、ダメダメ!!
もう泣かない!!
これ以上泣けば、お母さんにバレちゃう。
それに……もうすぐ仕事から帰ってくるお父さんにも勘付かれる。
パシャン。
顔に水を打ち付けるようにして洗っていく。
冷たい水があたしの悲しみをすべて洗い流してくれることを祈って…………。
だけど、やっぱりあたしの親はすごいね。
あたしがいつもと違っているの、わかっていたみたいだった。
それを知ったのは、お父さんが仕事から帰ってきて、みんなで夕食を食べ終わった後。
お母さんは今、台所で後片付け中。
畳の居間で、ご飯も食べ終わったからと出て行こうと、立ち上がった時。
座っているお父さんが話しかけてきた。
「で?
お前は何があったんだ?」
それだけ。
たった……それだけの短い言葉。



