知っていたハズだった。
麻生先輩がどんな人だったかなんて……。
女の人をたくさん側に置いて、特定の彼女さんをつくらない先輩。
知っていたのに…………。
ちゃんと、心の奥底では理解しきれていなかった。
麻生先輩は、いつだって、やって来たあたしを受け入れてくれた。
キス……だって……何回もしたし……。
告白したその日、一緒に帰った時は、足を挫いたあたしを抱っこして家まで運んでくれた。
紀美子先輩に呼び出された時――――。
側で見守ってくれたんだよね?
あたしが、危ない目に遭わないようにって……。
それに……それに……尚吾さんと一緒にいた時だって、
保健室まで着いてきてくれた。
麻生先輩は優しいから、いつの間にか期待しちゃったんだ。
もしかしたら、あたしは泡にならなくって、
人間になれるかもしれない……お父さんと出逢ったお母さんのように、
楽しく過ごせるんじゃないかって……。
いつか麻生先輩とお父さん。
お母さんとあたしを重ねるように見てしまっていたんだ。



