「俺の名前は、速水 尚吾(はやみ しょうご)だよ」
「!!」
名前を聞いた瞬間だった。
あたしの体から力が…………抜けた。
同時に、男の人に体を預ける体勢になってしまう。
速水 尚吾。
この人が…………。
麻生先輩の友達だった人。
そして……麻生先輩の好きな人、井上 香織さんの彼氏さん。
麻生先輩を恨んで、付き合っていた人を傷つけた人。
そう。
そうだ。
麻生先輩にチョコレートを渡した裏庭で、あたし……香織さんと一緒にいるこの人を見たような気がする。
いくら遠巻きだからといって、なんで……なんで忘れていたんだろう。
はじめから、この人が尚吾さんだってわかっていたら、人気のないこんな裏庭までのこのこ着いてこなかったのに!!
着いて来るべきじゃなかったのに!!
なんて……なんて愚かなマネをしてしまったんだろう。
悔しさのあまり、あたしは唇をギュッと噛みしめた。



