「あなたのお名前はなんて言うんですか?」
続けざまに言えば、男の人はニヤリと笑った。
ぞくり。
その笑顔に、あたしの体はまた縮こまってしまう。
いったい、あたしの感覚はどうしちゃったんだろう。
そう思うほど……。
しばらく無言の見つめ合いをしていると、ふいに突風が吹いた。
それと同時に男の人も動く。
「ひゃっ!!」
思わず声を漏らしたのは、男の人があたしの右腕を掴んだから。
そして……あたしは今、男の人の腕の中にいる。
なんで?
どうして今、こうなってるの?
あまりのパニックで、あたしの頭の中は真っ白になる。
「俺の名前はね……」
男の人は、あたしの耳元に口を近づけて話す。
包まれている腕の中はとても冷たい。
人の体温を感じるはずなのに、ただ寒いだけ……。
麻生先輩に包まれた時は、とってもあたたかだったのに、この人の側は寒い。
こわい。
あたしの体は小刻みに震えてしまう。



