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Side:
    .+*速水 尚吾*+.
   .+*Syougo Hayami*+.










旧校舎の片隅。

そこにいたのは見間違いようもない、奴の姿だった。

俺は奴らに知られないよう、やや距離を置いて奴を見ていた。


――久遠と居るのは……確か1年の、華原 手鞠……だったか?

彼女は2週間前に久遠の側に居るようになった女だ。





久遠の友人である葛野と共に廊下中を走り回っていたから何事かと思って来てみれば、

なかなか面白いことになってるじゃないか。


 



久遠は俺の女を奪ってからは特定の女をつくることはなかった。

奴の側にはいつも軽い女しか集まらない。


しかし、今回の女は……あの手鞠という奴だけは違うようだ。




久遠は必死にそのことを隠しているようだが、甘いな。

お前の行動なんて手に取るようにわかるよ。

丸見えなんだよ。




久遠の女の趣味は昔は違った。

純情そうな一途なタイプが好きだった。

久遠も、またそういう奴だったからだ。


だが、今は違う。

それは、俺があいつの女を壊したからだ。