「あら?
そんなこと言ったかしら?」
「お前……現に手鞠ちゃんを叩いてたじゃねぇか!!」
「あ……ほんとう!!
大丈夫?
痛くない?
やだわ、あたしったら、こんなかわいい娘に手をあげるなんて!!
ごめんなさいね」
葛野先輩から視線をあたしへと変えた女の人は、叩いた右のほっぺを撫でた。
悪い人…………ではないのかな?
葛野先輩と、仲がよさそうだし。
ふたりは否定してるけども…………。
でも、だったら、なんで、この人はあたしを叩いたんだろう?
「ごめんなさい。
あたし……てっきり久遠がまたおせっかいな行動をして放っておけないのかと思ったのよ。
あ、あたしのことは紀美子って呼んでね?
あたしは手鞠ちゃんって呼ぶわ」
「険悪ムードからいきなりちゃんづけかよ」
葛野先輩が横槍を入れれば、「こいつはクズって呼んでいいわよ」と、紀美子さんが言った。
紀美子さんは、まるであたしの思った疑問がわかったようだ。
あたしと向かい合う。



