三箱しかないのを見て紫苑は戸惑っていたけど、長くてもたった一ヵ月なんだから冬物とか入らないし、これで十分だと説明した。
意外に力持ちな紫苑に二箱持ってもらい、私は一箱だけを持った。
紫苑に言われるがまま、キングが玄関を開け、家の目の前に止めてあったワゴン車の後部座席のところに荷物を置いた。
「この車は?」
「『影炎』が所持しているものです。運転手は笹原さんです」
バックミラーごしに挨拶を交わし、私たちは再び家に入った。
「タルトー、シュー、ロールー」
「にゃー」
一階のベランダのほうから来たってことは、日向ぼっこしてたのかな?
「はい、入ろうねー」
一匹ずつ、それぞれのケージに入れていく。
「大丈夫ですか?」
「うん」
「では行きましょうか。理央、猫のケージを一つ持ってください」
「けっ」
「…………」
「だあああぁっ! わあったよ!!」
無言の圧力、か。
紫苑はシューのケージをそっと持ち上げ、外に出た。
キングもロールのケージをやさしく持ち上げた。
私はタルトのケージを持ち、二人に続いた。
ばいばい、私の家。
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