モノクローム

 

私のみ、女子トイレを出た。


恨めしそうな視線を背中に受けているのはわかっているが、自業自得としか思わない。



「お待たせしました」


「ぃよし! 行こっか!」


「どこにですか?」


「屋上!」



手を捕まれ、階段を上っていく。


途中チャイムが聞こえたのだが……転校二日目からサボりか……うわぁ。


そもそも、なんで屋上に行くんだろう?



「あ、飯塚くん」


「なぁに?」


「さっきはありがとうございました」


「なんのことかなー?」



こっちには顔を向けず、ただひたすら階段を上る。


気にしないでいいよ。ということなのか。嫌なことはなかったことにする質なのか。両方かな?


考え事をしていれば、屋上に来るまでの階段はあっという間だった。



「ユエちゃんきたよー!」


「遅い」



フェンスのところに、キング以外のみんなが揃っていた。


新谷くんはちょっと不機嫌そうだ。



「しょうがないでしょー。ユエちゃん、絡まれてたんだから」


「……相手は誰だ」


「クラスの女子たち。あ、その件でね、ユエちゃん知っちゃったよ、『影炎』のこと」

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