「臭いが移ると困るので、触らないでください」
と、私は後ろにいる男に言った。
その男の手は行くてを失い、空を掴んでいる。
「……え?」
困惑している声を聞き流し、私はコンビニに入った。
「さむっ」
いくら初夏だからと言っても、これは冷房いれすぎではないか。
私はお気に入りのドリアとカフェオレの紙パック、お菓子を少し買って外に出た。
話し掛けてきた男とその仲間たちは、もうその場にはいなかった。
「ただいまー」
誰一人いない家に放った言葉は、私を少し虚しい気持ちにさせた。
一人にしては広すぎる家に、孤独感を覚えないといったら嘘になる。でも、気楽だというのもある。
「にゃー」
「ただいまタルト」
毛が茶色と白のまざってとってももふもふな猫、タルトがお出迎えしてくれた。
ちょっと太り気味なタルトは、私の家族。
「いい子にしてたかー?」
「にゃー」
靴を脱ぐために玄関に座れば、さっそく擦り寄ってきた。
甘えん坊なタルトを抱き上げ、リビングに入る。
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