モノクローム

 

息絶え絶えに、麻子という子が必死の形相で叫ぶ。



「ま、マコは! 飯塚 奏太くんが好きなの! あなたが奏太くんの近くにいると、マコは不安で不安で仕方がないのよ! 他にも同じような思いをしてる子だっているの! わかったらもう二度と近づかないで!!」



…………なんて、自分勝手なんだろう。


自分のために、他の人の人間関係を崩そうというのか。


なんて……見苦しい。



「それで?」


「……え?」


「それで、それは私に関係があることなの? あなたが誰を好きになろうとあなたの勝手であるように、私が誰と一緒にいようと私の勝手。

 私と飯塚くんが一緒にいるのを見るのが嫌なら、あなたが進んで飯塚くんと一緒にいるようにしなさいよ」


「テメェ……! もう許さねェ!」



私の言葉のせいで、リーダーヤマンバの沸点が突破してしまった。


右腕を振り上げ、私の顔面目がけて一直線に向かってくる拳。


スローモーションに見えて仕方がない。


首を少し傾ければ、彼女の拳は後ろの壁に音を立てて激突した。



「嘘でしょ!?」


「躱した!?」


「ぴんぽんぱんぽーん」



場違いすぎる愉快な声が、女子トイレに響いた。

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