モノクローム

 

俺様男は怒った表情でこちらに近づいてきた。


近づくなって言ったのはあいつだろ……。



「気に入らねェな」


「そうですか。よかったです」


「あ?」


「私も、あなたのような人は気に入りません。気に入りたくもありません」



顔が一層歪んだ。


先に喧嘩売ってきたのはそっちなのに。


私は正直に言っただけなのに。



「ヤロォ……」


「理央(りお)」



目の前の男が腕を振り上げそうになったとき、また別の声がした。


クラスにもいた、黒髪の男。



「うるせェ」


「俺に言うな。このチビ女に言え」



ことの始まりはお前だろ。


何も言わずに睨み続ける。


この理央と呼ばれた男、名前は可愛いくせに、中身は可愛くない。


名前負けキングめ。



「そろそろ落ち着きましょう。お昼を食べにきたのでしょう? 奏太が早く食べたいそうですよ」



にっこりと微笑む柊くんと、もう食べ始めている飯塚くんが二人でくつろいでいた。


二人とも、私をこの男からかばおうとは考えなかったのか。



「チッ」



名前負けキングは舌打ちを残し、フェンスによっかかりながらコンビニのパンにかじりついた。

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