モノクローム

 

「昼……」



一度寝ると中々起きない私は、四限まだずっと寝ていたらしい。


転校したての私に、起こしてくれる人などいないから。



「しーちゃんしーちゃーんっ!!」



激しい音を立てて、教室のドアが開けられた。


聞き覚えのある声に寝呆けたままそちらを見る。


……ぼやけて見えない……。



「あれ? いないし。ってユエちゃんだ!」



誰だ。見えん。近づいてきたのしかわからない。



「忘れちゃった? 飯塚 奏太だよ?」



あぁ、この色は、そうか。



「大丈夫、覚えてます。今寝起きで、目の前がぼやけて見えないんです」


「あはっ、寝呆けちゃってるのか。かわいーなーユエちゃんっ」



軽い抱擁をされるがままで受けとめる。


なんかお菓子の匂いがする。チョコだ。



「ここにユエちゃんがいるってことは、同じクラスにはなれなかったってことかー。お昼は?」



抱擁から解放された頃にはもうぼやけていなかった。


前髪を昨日と同様、ピンで留めている。



「今から食べるところです」


「そっかそっか! 僕も今から食べるところなんだけど、一緒に食べる? 一人じゃないなら無理には言わないけど」

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