「これからよろしくお願いします」


「最初は大変かと思うけど、頑張ってくださいね」



頭を下げて、私は後ろにあったドアから理事長室を出た。



「はぁ……」



6月。


私は明日から、ここ、日笠(ひがさ)高校に通う。


紺色のブレザーとプリーツスカート。少しくすんだ赤のネクタイ。白のカッターシャツ。


この学校の制服は可もなく不可もなく。まさに妥当だった。


下調べしたとおり、学校は悲惨だった。


ゴミだらけの廊下。ヒビが入った沢山の窓。破かれた掲示板のチラシ。柱が少しくずれていたりもしている。



「まぁ、綺麗すぎるよりかはいいかな」



ちょっとぐらい荒れてたほうが自分にあってる。


比較的綺麗な理事長室を背に、私は足を進めた。今日は理事長先生に説明をうけるだけで終わり。


早く帰って、新しい家に運んだ段ボールを片付けなきゃ。



「だるいなぁ」


「どーしたのっ?」


「んん!?」



一人で歩いていたと思ったら、隣にどこぞの中学生が迷い込んでいたらしい。それにしちゃちょっとチャラいが。



「見ない顔だねぇ。転校生?」


「そういう君は? ここは高校だよ」


「僕は高校生だーっ!」


「おお、それはすみませんでした」



握り締めた両手を真っすぐ上にのばし、ぷんぷんといった効果音が似合いそうな顔つきで怒ってきた。

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