全員がホテルのような場所に滞在するらしい。


そして劇団を招いて、参加者の目の前で、『紡ぎ車』管理人の新作ミステリーが、劇として上演される。


ツアーは三日かけて行なうという。


そして最終日に、参加者全員が各々の謎解きを発表する……。



何とも贅沢なイベントだ。


発想がバブリーだ。


まるで、物語でよく使われる舞台設定……。


募集人数は不明だったが、ここ数ヶ月で、爆発的にユーザーが増えた『紡ぎ車』で、当選する確立は非常に低い。


しかも、参加費用は無料ときた。


僕もこの企画が『紡ぎ車』でさえなかったら、詐欺を疑う。


だけど、『紡ぎ車』ならそれもありなのかもしれないと、何となく思えた。
 

応募せずにいられなかった。
 

丁度大学が夏休みに入ったという事もあったし、いや、例え学校を休んだとしても、絶対参加したいと思った。


これはロマンだ。


親にも内緒の、僕だけが心の中で密かに温め続けた、ささやかな野望……。


この機会に、人生の残りの運を全て使い切っても構わない。
 

そして応募が閉め切られてから数週間後、祈りが通じたのか、


僕はミステリーツアー『十の瞳』に参加する運びとなった。