「……よし、そろそろ私も、風呂に行って来るよ」
えどがぁさんは、やっと笑顔を見せてくれた。
僕は浴場に向う彼を見送ってから、十二愛のところに行ってみようと思った。
途中、自室のドアから首だけを出し、キッチンから漂ういい匂いに鼻をふんふんとさせるグースを目撃したが、
僕と目が合うと、ぴゃっと部屋に引っ込んでしまった。
十二愛の部屋は、僕の部屋の隣である。
軽くノックをすると中から、
「誰……?」
という不安げな小さい声。
「僕だよ」
そう答えると、施錠が解ける音がして、十二愛がおずおずとドアを開ける。
毎度の事ながら、つい緊張してしまう。
いつか、このドアを開けて貰えなくなるのではないかという錯覚を起こしてしまう。