会話が終って数分経つと、建物の中から一人の男性が小走りで出てきた。その男性は門を施錠しているロックを解くと、マリアたちを招き入れた。
「オマチシテマシタ。サア、ドゾ」
 彼は少し緊張したような面持ちで、意外と上手な日本語で自己紹介した。「ワタシはピエール・ダン・茂木とイイマス。祖父が日本人デス。ココではワタシがイチバン日本ゴシャベレマスノデ、アナタタチの案内役デス。ヨロシクオネガイシマス」
 ピエールはそう言うと、まず所長に挨拶に行くので自分についてくる様に言った。彼を先頭に入り口までの道程を歩いていると、上の方でざわざわと話し声が聞こえる。マリアが上を見上げると、三階建ての建物の窓に、いくつもの人だかりができ、マリア達を好奇心の目で見ては何やら話している。大体言っていることの想像はつくが、マリアはピエールに彼らが何を言っているのか聞いてみた。