マリア

 それから4~5分歩くと、一同はその建物の前へと着く。門には“ Deutsches Rotes Kreuz(ドイツ赤十字社)”と書いてあり、門の向こうに入り口に行くまでの道が見える。中央に入り口まで続く煉瓦造りの道が延び、いくつかの三階建ての棟を通り過ぎていくようになっていた。門が閉まっていたので、来客用の古びたインターフォンを原田が押す。するとしばらくして雑音交じりの返事がドイツ語で返ってきた。当然、原田もドイツ語で会話を始め、2~3言葉を交わす。
「ね、何て言ってるの?」そう聞いたのはマリアだった。すると、ミトが「今から迎えに来るって」と言うと、今度はカイトが「僕達を待ってたってさ」と言った。どうやら二人とも言葉がわかるらしい。