「とく…じろ……」
(マリア、もういかなきゃ……。お願いだから、泣かないで。僕は、いつでも君の…側にいるよ…だから……)
 徳二郎から伝わる思いが、途切れ途切れになっていく。
「いや…!徳二郎、いやだ……!」
 徳二郎は、ただ優しく、微笑んだ。

( マ リア  キスを )

 マリアは、そっと徳二郎と唇を重ねた。唇を離すと、徳二郎が静かに、ゆっくりと目を閉じる。その、最後の瞬間までマリアは見つめる。長い睫の上下が、ぴったりとくっ付き、微かな瞳の動きもやがて止まる。

「徳…二郎。徳二郎…」