マリアもショーの途中からハイな状態になり、気づけばしっとりと汗を掻きステージの袖へ引っ込んでいた。まだ身体が熱い。不思議な充実感が体を満たしていた。あの男は来ていたのだろうか。でも今日は花道に姿は見えなかった。そうだ、昨日あんな事があって店をつまみ出されたのだから、きっと店に入る事ができないのではないのか。よく考えればわかる事だとマリアは後悔した。マリアは、急いで控え室へと向かった。
マリアが急いで帰る支度をしていると、支配人がいつに無い上機嫌顔で控え室に入ってきた。
「おーい、マリア。今日は随分と色気があるじゃねえか。ほら見ろ、今日の上がりは……」
支配人が先ほどのステージのおひねりをポケットから出した。ほとんどが千円札だったが、十枚以上はある。だがマリアはそれに見向きもせず、せっせとブラジャーのホックをはめていた。後ろではまだ支配人がペラペラとさっきの踊りはどうとかこうとか、他愛の無い事をしゃべっている。マリアは今日ワンピースを着てきたのだが、後ろのファスナーが急いでいるせいかなかなか上がらない。堪らず、「ちょっと、その金は全部あげるからコレ上げてよ。鈍い男ね」と苛立つように言った。金をいらないと言われ、支配人はビックリしたような表情を浮かべたが、すぐにニタァと気味の悪い笑みでマリアの側へやって来た。ファスナーを上まであげ、マリアの両肩にポンと手を置き、鏡越しに話しかけてくる。
「随分と急いでいるじゃねえか。さっきの踊りといい、新しい男でもできたのか?」
黄色い息が首に掛かる。マリアはうるさい蠅のように、支配人の手を振り払った。おっと、という風に大げさに両手をあげ、後ろへ一歩下がる。
「まあまあ、怒るなよ。こっちとしちゃあ今日みたいに踊ってもらえりゃ儲けが上がるからな。せいぜいがんばってくれよ。捨てられた時には一度ぐらい相手にして……」
マリアは支配人が喋るのを無視し、小さなショルダーバッグを肩に掛け、部屋を出た。
マリアが急いで帰る支度をしていると、支配人がいつに無い上機嫌顔で控え室に入ってきた。
「おーい、マリア。今日は随分と色気があるじゃねえか。ほら見ろ、今日の上がりは……」
支配人が先ほどのステージのおひねりをポケットから出した。ほとんどが千円札だったが、十枚以上はある。だがマリアはそれに見向きもせず、せっせとブラジャーのホックをはめていた。後ろではまだ支配人がペラペラとさっきの踊りはどうとかこうとか、他愛の無い事をしゃべっている。マリアは今日ワンピースを着てきたのだが、後ろのファスナーが急いでいるせいかなかなか上がらない。堪らず、「ちょっと、その金は全部あげるからコレ上げてよ。鈍い男ね」と苛立つように言った。金をいらないと言われ、支配人はビックリしたような表情を浮かべたが、すぐにニタァと気味の悪い笑みでマリアの側へやって来た。ファスナーを上まであげ、マリアの両肩にポンと手を置き、鏡越しに話しかけてくる。
「随分と急いでいるじゃねえか。さっきの踊りといい、新しい男でもできたのか?」
黄色い息が首に掛かる。マリアはうるさい蠅のように、支配人の手を振り払った。おっと、という風に大げさに両手をあげ、後ろへ一歩下がる。
「まあまあ、怒るなよ。こっちとしちゃあ今日みたいに踊ってもらえりゃ儲けが上がるからな。せいぜいがんばってくれよ。捨てられた時には一度ぐらい相手にして……」
マリアは支配人が喋るのを無視し、小さなショルダーバッグを肩に掛け、部屋を出た。
