「もっと、早く病院に来るべきだったのよ」
 そう、心配そうにベッドの横で話すマリアに、徳二郎は儚げに微笑んでみせる。日に日に弱っていく徳二郎を、見ているしかない自分に、マリアは憤りを覚えた。しかし毎日回診に来る原田さえも「もう、医学的に出来ることはなくなってしまった。後は少しでも彼の側に居てあげることだ」と、言うのだ。もう、効く薬が無い。絶望的な言葉を突きつけられ、マリアは原田に当たった。だが、徳二郎自身は、それを運命だと受け入れるかのように、静かに、ただ静かにそこにいた。泣くでもなく、喚くこともない。