センターの病室で、徳二郎は椅子に座り本を読んでいた。この部屋は徳二郎が使いやすいよう、本棚やパソコンなど、研究に必要なものが揃っているだけでなく、バス・トイレもあり、簡単な料理も出来そうなキッチンまであった。ここが病院と言わなければ、高級なワンルームで通るだろう。この部屋で病室らしいのは、部屋の中央にある介護用ベッドと、入り口のスライド式のドアぐらいか。
 徳二郎が本を小一時間読み、小休止で眉間に手を当て、目の疲れをとっているときだった。‘トン’とドアを一度ノックする音がした。原田は二回ノックをするので、徳二郎は「どうぞ」と声をかけた。