マリアは徳二郎の病室がある廊下の壁に寄りかかり、自分の体を抱きしめた。
 こわい。あらためて窓から照らす夕日に目をやる。真っ赤に燃え、ゆっくりと山の向こうへ沈んでいく。
 まるで、いまの徳二郎のようだと思った。マリアとの恋に真っ赤に燃え上がり、やがて沈んでいく。
 その先には、あの太陽のように新しい世界が待っているのか。それとも、永遠に続く闇なのか……。マリアには、わからなかった――。