「ドイツの大学へ行ってからも僕はまだあまり喋れないでいた。だけど不思議とみんなの言っていることは理解できたんだ。やっぱり十歳で大学に通うのは不思議に思われたけど、僕は授業をうけるよりもほとんど研究ばかりしていた。はじめは大人のいうものを実験していたけど、そのうち医学に興味をもった。十五歳の時には細胞学に夢中になったよ」
昔のことを語っている徳二郎が、にわかに生き生きとした。マリアには縁遠い世界。徳二郎が少し遠く見える。
「大学を出て赤十字社に行ったのは二十歳の時だった。原田に会ったのもそのとき。少し喋れるようになったのは原田のおかげなんだ」
徳二郎は原田に言葉を教えてもらったらしい。彼とはその頃からのつきあいで、ただ一人の親友だと言った。
「原田も頭がいいヤツで、スキップで卒業して赤十字社にきた。でも自分より頭がいい僕がいて驚いたって」
原田のことを嬉しそうに話す徳二郎を見て、マリアは少し嫉妬した。
昔のことを語っている徳二郎が、にわかに生き生きとした。マリアには縁遠い世界。徳二郎が少し遠く見える。
「大学を出て赤十字社に行ったのは二十歳の時だった。原田に会ったのもそのとき。少し喋れるようになったのは原田のおかげなんだ」
徳二郎は原田に言葉を教えてもらったらしい。彼とはその頃からのつきあいで、ただ一人の親友だと言った。
「原田も頭がいいヤツで、スキップで卒業して赤十字社にきた。でも自分より頭がいい僕がいて驚いたって」
原田のことを嬉しそうに話す徳二郎を見て、マリアは少し嫉妬した。
