どんな希少な客かと顔を見てみると、意外と若くてイイ男だった。暗がりでは良くわからなかったが、こんな場所には不釣合いなように思える。マリアはおひねりの分たっぷりサービスしようと男の前で腰を振った。胸に当てていた手をどけ、両腕で胸を寄せて男の前に乳房を露にする。しかしおかしな事に男は喜ぶでもなく、あまり表情を変えずにマリアの顔を見つめていた。胸には興味が無いのかと思い、今度は男の前に股間を持っていき、パンティの紐を解こうとした。だがその時、男はマリアの手を取り、その行為を止める。マリアは驚いた。そして疑問を投げかけるように男の顔を見た。二人の視線が合う。瞬間、マリアは体に電気が走ったような感覚に襲われる。ビクッとなって、掴まれている手を振り払おうとすると、男はさらに強くマリアの手を握った。
 会場のまばらな客の中からも、せっかくのショーを中断されて、ブーイングが出た。その異変に気づき、ステージ横のドアから支配人らしきタキシードを着た大きな男が出てきた。ステージ上の様子を見ると、その男はつかつかと花道の下にやって来た。
「ちょっと、お客さん。ウチじゃそうゆーの困るんですよね。わかる?おさわり禁止。入り口に書いてあったでしょ」
 ぐいと、男の体をマリアから引き離した。開放されたマリアは、脱いだドレスを拾い上げ、それで体を隠しながらステージの奥へ滑り込んだ。会場は舌打ちまじりのブーイングが聞こえたが、すぐに次の出番の子の音楽が鳴ると、また先ほどの落ち着きを取り戻す。男はどうやらすでに会場の外へつまみ出されたようだ。
 ステージの脇に引っ込んだマリアは、まだ胸がドキドキしていた。さっきの何だったのか。たまに体に触って興奮する客もいるが、彼はそんな類には見えなかった。それにあの電気が走ったような衝撃。まだ、体の奥が熱く、痺れていた。