男は四十代後半ぐらいだろうか。いや、少し無理をして生やしたようなあご髭のせいで、少し老けて見えるのかもしれない。夜中だというのに、パリッとした仕立ての良いスーツを身に纏い、この場所には不釣り合いな輩だった。男はマリアの不躾な問いに驚くこともなく、わずかに笑って答えた。
「マリアさんですね。私は原田。徳二郎の友人です」
 ゆうじん?明らかに徳二郎とは年の違うこの男が?にわかに信じられず、マリアは一層警戒心を露わにした。それを察知してか、原田はスーツの内ポケットから手紙を取り出し、マリアに渡した。