都市近郊の港


白銀に輝く巨大な客船から静かにタラップを降りたサングラスの長身の男。
鼻を一啜りりし呟く

「ふむ……臭いな…」

ヘドロの生臭さと磯の匂いの混ざった風がセミロングの白髪をたなびかせる

タラップの下に並ぶ正装の老若男女入り混じった三十人ほどの団体が一斉にそのサングラスの男に深々と頭を下げる

燕尾服を着た一人の小柄で背中が異様に曲がった老人が片足を引きずりながら一歩前に出た。

もう一度深々と不器用に頭を下げ、サングラスの男に話しかける

「美麗の君よ…お待ちしておりましたぞ」

「うむ…樫本か…大義」

「ギヒヒヒ…昔のようにカシモドで結構でごさいますよ?美麗の君よ…」

「むきゃああああ!」

ガンガラガラガン!

老人と話す後から大きなスーツケースを抱えた小柄な女の子がタラップを荷物ごと転がり落ちてくる

べタン!
ガシャーン…

「痛っ〜い!鼻打ったぁ!あ痛たたたた……ちょっと!ラード!あなた少しはジェントリーってやつがないわけ?」

「迂闊な奴だ…ペチャ鼻がそれ以上低くならんといいな?………荷物は大丈夫か?それは大事なものなんだからな…慎重に扱え…」

「ンなんですってぇ?やい!ラード!大体ねぇ、本当にこの連中が待っていたのはモリス財団代表代行のアタシなのよっ!なんでアナタが悠々一番乗りしちゃってるワケっ?」