それから長袖と長ジーンズに着替えて、フード付きの黒い上着をはおる。
今日みたいな暖かい日はたいがいの人が半袖とか半ズボンなんだろうけど、足はもちろん腕にも痣が結構あるから、かくした方が良いと思って。
黒い帽子も深くかぶって、これで完ぺき。
うつむいて歩けば、顔のはれも痣も見られない。
何か思われるにしてもちょっとネクラなヤツ、ぐらいだろうし。
人って結構、そんなもん。
本当はマスクもつけたかったけど、マスクはリビング、すなわちお母さんがいるから止めとく。本末てんとうになる。
足音を立てずにそろそろ玄関へと向かう。
隊長、星はまだリビングにいるようですぜ。
了解。そのまま目的地へ移動せよ。かんづかれるな。
いえっさー。
とかいう一人演劇(ちょっと切ない)を終えて玄関のドアまでたどり着く。
ふぅ、目的達成。
そろりそろりと靴をはいて、…早口で言い切った。
「図書館に行ってきますっ5時には家に帰りますっ!!」
そのままドアを開けて逃走。
脇目もふらず走って曲がり角で急ブレーキ。
そしてバッて振り向く。
うん。平気。
大丈夫だ、問題ない。
心臓が少しさわがしい。
左胸付近のシャツを、両手でギュッてつかむ。
少し落ち着かせてから、歩き出す。ついでに帽子をかぶりなおした。
日差しはとても暖かくて、私を暑苦しく包み込む。
「…脱出、成功」
まぁ、結局夕方には帰るんだけどさ。
どうでもいいけど、
不幸中の幸いとかいうならば。
「今日、学校なくて良かったぁ…」
日曜日に感謝。
とりあえず、右足半端なく痛い。
…ほんと、どうでもいいけど。