どんよりと立ち込めた厚い雲が、男の心情を物語る様だ。

千住新橋を重い足取りで渡る。
梅雨時のじっとりとした川風が男の頬を撫でてゆく。

川本雄太郎 43歳

足立区役所に離婚届を出した帰り道である。

月並みな話だが、20年の夫婦生活が薄っぺらな紙一枚で終りを告げる、そんな呆気なさに虚しさを覚えた。