『ちょ……どういうこと? てか、待って。ちょい、待って。部屋を移動するから』

 バタバタと足音が聞こえてくると、バタンとドアが閉まる。

『ごめんね。旦那が居間でテレビを見てるからさ。寝室に籠ってみた。んで、結婚ってどういうこと? 綾乃、付き合ってる人っていたっけ?』

「ううん。いないよ」

『じゃあ、何で結婚できるわけ!』

 まあ、確かに。そりゃそうだ。

 相手がいないのに、結婚はできないよね。

 私は心の中で、里美の突っ込みに頷いた。

「なんか……結婚しちゃったの」

『はい? ちゃんと日本語をしゃべってよ。私にわかるように話しなさい』

 私はオレンジ色の空を見上げながら、「あのね」と今日の出来事を思い出しながら、口を開いた。













「やっぱり……帰ろうかな。まずいよ、私……」

 弱気になっている私の腕を、隣に立っている理沙ちゃんがガシッと掴んできた。

「大丈夫です。絶対に、オッケー。ていうか、私が良いって思ってるんですから」