この謎は翌日解消された。
教室に入るとすぐに理沙が話しかけてきた。
「ねぇ、昨日のデートはどうだったのよ?キスしたの?」
「そんなまだ早いって!普通に映画館行っただけよ」
ケンタのことを一瞬だけ考えてしまった。
そんな中、教室の扉が開いて先生と転校生が入ってきた。
理沙はあわてて自分の席に戻って行った。
「えぇ、今日からこのクラスのクラスメイトになる安藤里香だ。仲良くしてやれよ!」
「安藤里香です。よろしくお願いします。」
たしかに柴田が言うように地味な女の子であった。
「あっ!」
思わず声をあげてしまった。
昨日アパートの前に立っていたのは間違えなくこの子だった。
中学生くらいに見えたのだが、暗くて遠かったため勘違いしたのだろう。
「どうした、宮田。」
先生がこっちを見た。
「いえ、なんでもありません。」
近所に引っ越してきた人かなと思った。
昼休みに安藤さんに声をかけてみた。
「安藤さん、はじめまして。私、宮田朱里。朱里って呼んでね。」
安藤さんは読んでいる本を閉じて私の方を見た。
「別に………」
何と言っているのかよく聞き取れなかった。
それほど安藤さんの声は小さかったのである。
「なに?もう少しはっきり言ってくれないかな。」
「だから、私に構わないでって言ったの!!」
突然の大きな声に驚いた。
まるで転校生をいじめている、そんな風にクラスからは思われたのかもしれなかった。
学校帰り、今日はケンタが部活なので理沙と一緒に帰った。
理沙と一緒に帰る時はいつもマクドナノレドで2時間くらい話をしていくのだが、今日はなんだかそんな気分ではなかった。
「あの転校生なによ。いきなり私に向かって怒鳴るなんて。」
理沙に愚痴っていた。
「別に気にしない方が…ほら転校生だしまだ緊張しているのよ。」
「なにそれ、理沙は私が悪いと思ってるの?」
「そんなことないよ。でもやっぱ皆仲良くしていかないと…」
なんか安藤里香のことが嫌いだった。
