アイ・スクリーム


放課後。

帰る支度をしていた。

「おい、早くしろよ。お前映画に遅れるぞ!」

いきなりケンタにせかされた。

「えっ映画って何?」

「お前昨日約束しただろう。明日は映画見に行こうって。」

これもまた記憶になかった。

「そうだったね。早くいこう、いこう。」

「なんだよ。片付け遅いのお前の方じゃないかよ。」



私たちはそのまま新宿の映画館に向かった。

「なんかデートみたいだね。」

仲の良いケンタと映画に行くのが嬉しくて仕方がなかった。

「何言ってんだよ、デートに決まってんじゃないかよ。」

驚いて思わず声が出てしまった。

開いたままの口を手で隠した。

「デートって私達そういう関係じゃ…」

「俺の勇気を出した告白はなかったことにしたいって言うのか?」

「告白!?」

また驚いた。

ケンタとは仲の良い友達だと思っていた。

「まさか…お前…ほんとに覚えてないのか?」

全く覚えてなかった。

「やだねぇ、そんなわけないじゃない。」

ケンタを軽くたたいた。

「だよな、良かった。」

必死に健太の告白を思い出そうとしていた。


いつ…


どこで…


なんて…


いくら考えても思い出せなかった。



しばらく歩くと映画館の前の大きな交差点に辿り着いた。


「ココニキテハイケナイ」


何かがそう訴えてきた。

交差点で信号を待つ人々、雲の間から照らしている太陽、人々の間を通り過ぎている風。

辺りを見回したが私に話しかけているものはなかった。


「ココニキテハイケナイ」


何度も何度もそう訴えてきた。

しまいに耳を両手でふさいでしまった。

「なにやってんだよ、宮田!もう信号青だぞ。」

ケンタの声でふと我に返った。

「ねぇ。場所変えない?」

「はぁ?ここまで来て何言ってんだよ!いまさら映画観たくないって言うのか?」

「いや映画は見たいんだけど…もしここの映画館が私たちが見ている間に火事になったらどうする?私たち死んじゃうかもよ?」

そんなことはこれっぽっちも思っていなかったが、このまま映画館に行ってはいけない気がした。

「わかった、わかった。じゃあどうするんだよ!」

真剣さにケンタは呆れたようだった。

「……渋谷の映画館に行こう!」

「おい、そっちの映画館だって火災にあう可能性は同じ…」

ケンタが話している途中で手を引っ張った。